2 women to cry


a memorandum of dj2women
by womenscrossing
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断章2

どこかにありそうなユートピアを夢見るよりも

いま目の前にあるディストピアを見つめていたい
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# by womenscrossing | 2015-11-24 23:42 | 断章

南青山五丁目午前十時――真利子と麻美のふたり話し【14】

【第14回】(2015/10/30)

麻:あーっ、気持ちいい、この冷たさ。
真:うわー、貫いてくるよ、体を。
麻:たまらないね。
真:生まれ変わるよ。
麻:そこまで?(笑) でもこの感覚がほしいから、この時期の夜に出歩くんだもんね。
真:「寒い」とか言うやつ、信じらんないよ。生きてる醍醐味放棄してる。
麻:ダウンジャケットとか、ありえない。あれは真冬にしょうがなく着るもの。
真:ま、世間からすると、私たちが「無理してる」ってことになるんだろうけど。
麻:さんざん言われてきたしね(笑)。でもこれだけは譲れないね。
真:高校の頃からこうしてさ、この季節の風、この格好で受け止めてきたんだもん。もうこうなったら死ぬまで受けるよ。この「みゆき通り」でさ。
麻:まあ、「みゆき通り」は、今日たまたまここにいるってだけだけどね(笑)。
真:いいじゃん、似合うし。
麻:まあね、久しぶりの二人のディナー。店の外に出たらこの風。たしかにこの通りの広さ、「抜け具合」、交通量が絶妙にちょうどいい感じはあるな。青山通りじゃだめだね。
真:そうでしょ? クリエイターにそう言ってもらって自信ついたよ。
麻:東京ってどんどんディストピアになるけど、この時期の夜のこの通りのこの風、を受けると、ディストピアでもこれだけあればもういい、って気になるよね。
真:なるなる。もうさ、どうせ、街全体がよくなるなんてないんだから、この一瞬、この風、この空気をつかまえないと。それだけだよ、ここで生きてる醍醐味って。
麻:諦めとか開き直りじゃなくてね。ほんとにそれで、それが、幸せだと思ってるよ、私は、ってね。誰にってわけじゃないけど、言いたいよね。
真:そうね。あと何回この風受けられるのかな。ちょっと考えるけど、考えたくない。
麻:……
真:冷たくって泣けてきそうだよ。
麻:もう生暖かいところには行きたくない。
真:もうちょっと歩くか。
麻:コーヒーだけは買うよ。とびきり美味しい豆を、濃く淹れたやつ。
真:そうだ、このときだけはミルクはいらない。
麻:だって、なんかね、自分の存在の濃いい成分を抽出したい気分だから、体に入れるものもそうなるよ。
真:ピュアとかそういう意味じゃなくて、ハードな勝負だね。
麻:そうそう。それであとちょっと外を歩いていられる。
真:いつかは家に戻って、シャワーを浴びるんだけど、でもそれまで、ちょっとでも、身を切って、身から絞り出して、生身を感じたいんだよね。
麻:心身の健康とかさ、どうでもいいんだよ。この風と、意識と、媒介する飲み物があればさ。
真:ほんとは、ちょっとだけチョコも欲しいけどね。カカオ72%のね。
麻:たしかに、ね。でもコンビニには入りたくない。
真:ないない、コンビニ見たくもない(笑)。
麻:あの店、チョコなんて売ってたっけ?
真:ガトーショコラならあるけど……。
麻:じゃあ最悪、それテイクアウトして、歩きながらかぶりつくよ!
真:やった、かっこいい! しよう、それ。
麻:よし、早歩き!
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# by womenscrossing | 2015-10-30 23:22 | [連載]南青山五丁目午前十時

南青山五丁目午前十時――真利子と麻美のふたり話し【13】

【第13回】(2014/09/10)

真:あー、気持ちいいね、最高だね!
麻:やっぱりこの季節の外苑東通りはたまらないね! 自転車乗ってていちばん幸せを感じるよー。
真:ま、私はママチャリだけどね!
麻:ママチャリでも十分気持ちいいでしょ。
真:ちょっとー、そこは「ママじゃないただの主婦なのにママチャリ~?」ってつっこむところでしょ!
麻:しないわよ、そんなつっこみ!
真:あ、要求水準高すぎた?
麻:むしろ低すぎ!
真:あははー、失礼! いやー、でもね、いっつも思うわー、この時間がずっと続けばいいのにーって。
麻:でもやっぱさ、これはキンキンの真っ昼間か、真夜中のどっちかでしょ。
真:そうね、もしくは徹夜明けの朝。
麻:あーそれも捨てがたい(笑)。
真:そんでこのスペシャルな開放感ってさ、なぜか「初秋」でしか味わえないんだよね。
麻:うん、もちろん春の午前10時も、夏の早朝6時もいいんだけど、初秋の午後2時に匹敵するシチュエーションなし!
真:夏が終わる寂しさが云々っていっても、この気持ちよさの魅力を考えれば、全然初秋大歓迎だよね。
麻:ま、それは私たちが年とったってことかもしれないけど。
真:なあにそれー、私たち、初秋マダムってことー?
麻:一応まだ、枯れてはないわよ。
真:そうだけどさー……。まあ、悪くはないか。
麻:悪くない、悪くない。
真:B面の2曲目に入ってる軽めのAORがなぜかいちばん気に入っちゃう感じか。
麻:なに言ってんの?(笑)
真:あれ、わかんない?、いまの。
麻:いや、わからなくはないけど……。
真:あー、説明するのはめんどくさいな。
麻:いいよ、しなくて。わかるから(笑)。
真:うん、さすがだ!(笑) ねえ、やっぱさ、このあと行くのはさ、紅茶でしょ?
麻:もちろん。
真:じゃあ久しぶりにあっちの専門店まで足延ばすか。
麻:そうね。賛成。
真:私、ミントティーにしよー。
麻:私はラベンダーティーかな。
真:あー、ずるい、それ初秋っぽい!
麻:ずるくはないでしょ(笑)。まあ、ちょとベタかな。
真:いいじゃんいいじゃん、ベタやっとかないと。
麻:そうね。あっという間に過ぎちゃう季節、だもんね。
真:季節に色をつけないと、一瞬でも。
麻:ああ、飲み物ってそうだよね。からだをとおして、身の回りの環境に色をつける。
真:そのときだけね。明日になったら消えちゃうの。
麻:この街で季節と同期するには、いちばんいい方法。
真:そう、わたしひとりだけの、誰でもできる魔法ね。
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# by womenscrossing | 2014-09-11 00:24 | [連載]南青山五丁目午前十時

南青山五丁目午前十時――真利子と麻美のふたり話し【12】

【第12回】(2014/08/08)

真:ねえ、今年の夏って、ちょっとなんか空しい感じしない?
麻:いつもより街に人が少なくて寂しいってこと?
真:そういう要素もなくはないけど、なんていうか、人はいても生命力がないというか。
麻:ああ、そういうこと。うん、そういう意味では、年々そんな感じはするかな。
真:夏自体が、ということじゃないんだろうけど。きっと、東京の夏が。
麻:そうなんだろうね。本来夏がもっている力が、東京の街では急速に減退してるみたいな、ね。
真:でさ、すっごい複雑なんだけど、そういう変化を、すっと受け止めている私もいるのよ。
麻:しょうがないっていうふうに?
真:もうちょっと突っ込んでいうなら、そうなるだろうな、と最初からわかっていたような感覚。
麻:必然みたいな。
真:そうね。そして、それはそんなに悪いことじゃないっていう。
麻:むしろそのほうが健全ってことか。
真:んー、そもそもさ、やっぱり、もうこの街に、夏らしさとか生命力とか、期待しちゃいけないんじゃないかな。そういうこと。
麻:まあ、これだけ環境が変化してしまってはね。
真:そう。これまでは、こんな汚い都会でも、思いっきり夏を楽しんでやる、って能天気に思えていたけど、もうそれはない。
麻:ゆるやかに土壌が溶解していくような感じかな。
真:それを見守ってる。過去の都会の夏の思い出が、全部幻みたいに思えてくる。
麻:SFみたいだね。
真:そう、だから、ぼーっとしちゃう。このこと考えると。
麻:いまさら何かを取り戻そうとか思えないね。
真:思えない。あとは見送るしかないね、この街を。
麻:夏の生命力ってやつを感じたくなったらどうする?
真:そしたらどっかに引っ越しちゃうかもね。いつか。ぱっと。
麻:そうだね。それが正しい。
真:そうやってさ、私のなかでの都会を守るんだよ。
麻:どこかでね。
真:そう、どこかで。ここでは守れないね。
麻:見送るだけ見送って、そのあとこんどはこっちが「じゃあね」って。
真:別に誰も見送ってくれなくてもかまわない。
麻:きっとその頃、東京は、なにかを必死で取り戻そうとして、狂騒のイベントやらなんやらやってるよ。
真:そう、そこが潮時だね。
麻:それにつきあうほど死んでないものね、私たちの感覚。
真:ごもっとも。だからこの街の先も見えるし、この街を捨てる私も見える。
麻:ま、せいぜいそれまでは、この都心で、ちょっとアンニュイな滅びの美学にひたってますか(笑)。
真:そう思って笑ってるしかないよね。この「過去の街」、南青山で。
麻:渋谷や新宿にいたらわかんないのかな、この感覚。
真:そりゃわかんないんじゃない? そんなこと感じる必要もないんだよ、きっと。
麻:そうだね。別にどうこう言うつもりはないけど、ああ、わからないんだなあって思っちゃうね。
真:最初から「終わった」感覚からスタートしてるのってさ、案外ラクだよね(笑)。
麻:ある意味では、場所と世代ゆえだけどね。
真:間違ってもラッキーとは言えないけど(笑)。
麻:そう、別に幸も不幸もなく、こういう感覚でしか生きられない。
真:われながらちょっとイヤになることもあるけど(笑)。
麻:まあね。
真:それにしても今日は天気いいね。歩いてて気持ちいい。
麻:天気は夏そのものだね。
真:いますれ違った人たちは、どう思って歩いてたんだろう、この道。
麻:暑いなー、ってだけじゃない?
真:そうか。まあそうだよね。
麻:それはひとつの事実なわけだし。
真:じゃあ私たちもひと休みするか。
麻:そうねー。あと何回この街で夏を過ごすかわからないんだから、たんたんとルーティンをこなしましょ(笑)。
真:じゃあ、せめていつもは頼まないもの頼んじゃおうかな。
麻:熱いエスプレッソとか?
真:あー、それいいね! 退廃的な感じするよ!
麻:しないわよ(笑)。
真:あ、でもさ、たしか夏限定メニューに、エスプレッソを使った冷たいスイーツがあったはずよ。それにしよう。
麻:すでに退廃的を離脱してるじゃないの(笑)。
真:やっぱり欲望には忠実じゃなくっちゃね。こんな街なんだからせめて飲み食いくらいはさ。
麻:はいはい。早く入りましょ。
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# by womenscrossing | 2014-08-08 18:09 | [連載]南青山五丁目午前十時

南青山五丁目午前十時――真利子と麻美のふたり話し【11】

【第11回】(2014/05/11)

真:おはよう。
麻:もう12時よ。
真:わかってるわよ。
麻:どうしたのよ、元気ないわね。まあ珍しいことじゃないけど。
真:えー、わかんないの?
麻:なんでわかんなきゃいけないのよ。長いつきあいだから?
真:そんなありきたりな理由じゃない!
麻:そこで怒らないでよ。話しがややこしくなるから。……ほら、注文。
真:あのね、ガトーショコラとカプチーノ。
麻:何も食べてないの?
真:厚切りのシュガートースト食べてきた。
麻:それでよく食べるわね(笑)。
真:ほっといてよもうー。
麻:はいはい、ごめんなさい。で、何が憂鬱なのよ。
真:だってさ、わかるでしょ、ほら、こんなに晴れててさ、緑がまぶしいんだよ!
麻:あ、そうか、あなたは新緑の前が好きなんだもんね。
真:そう。
麻:でも新緑が嫌いなんじゃないんでしょ?
真:もちろん。でも、だからこそ、つらいのよ。美しい新緑がばーっと目に入ってくるのがさ。
麻:あいかわらずアーティストだね、感覚が。全然わからない。
真:そうやってばかにしないでよ、クリエイター!
麻:へんなキレかたしないでよ。恥ずかしいじゃない。
真:あー、いやだ。
麻:わかったわよ。冷静に考えてみるわね。えーっと、桜が散るのが寂しいから満開の桜を見るのがつらいって感覚はたぶんそんな珍しくないと思うから……。でも、新緑は散らないもんね……。
真:そう、その逆でさ、ちょっと見ない間にさ、なんか違う生き物みたいにさ、こう、うわーっとなって。
麻:すごい生命力だもんね。梅雨の頃とか、一気に葉が濃くなって、みっしりとした木になって。
真:そう、なんかそれがね、その驚きがね、ショックなのよ。
麻:自分という存在を凌駕していってしまう感じ?
真:というか、ペースがね。
麻:早すぎる?
真:早い遅いというか、私になんの断りもなしに、っていうのが。
麻:どうやって断るのよ(笑)。
真:なんかあるはずじゃない、兆候がさ。
麻:いや、それはあるんじゃない?、実際。
真:私が気づいてないだけ?
麻:そうそう。たぶん
真:じゃああなた気づいてるの?
麻:いいえ。
真:じゃあ無理よ、私になんて。そもそもあなた新緑の季節がいちばん好きなんでしょ?
麻:そうよ。
真:じゃあなんで私みたいに感じないのよ!
麻:そんなこと言ったって。
真:冷静すぎるじゃない。はしゃぐでもなく、私みたいに焦ったり戸惑ったりすることもなく。
麻:うーん。私、そこまでセンシティブじゃないからね……。単純に、生命の始動する感触を共有できる感じが好きなだけで……。
真:そんなの無責任だよ。
麻:えー、そんな責任もたなきゃいけないの!
真:そうだよ。そんなの、自然に対して無責任だよ。
麻:んー、そう言われたら、そうですかとしか言えないけど……。
真:なんかさ、別にさ、もっとシリアスになれとか、スピリチュアルになれとかじゃなくってさ、別におおらかでシンプルでいいんだけどさ、なんかさ、ぴしっと、こう、合わせる意識をしてみてほしいんだよね、ペースというか、リズムを。
麻:自然と?
真:そう。自然って、おおげさだけど。あくまで、自分の目の前にある自然の呼吸とね。
麻:あー、なんとなくわかってきたよ、それ。
真:わかる?
麻:自然全体と交感するなんて不可能だし不遜な態度だけど、自分が関わっている自然とは、接している限り、わかろうとする責任があるよね。
真:ある。
麻:自分が環境関係とかの人間でなくてもね。
真:むしろないからこそ。
麻:うん。いやー、それ、他の人を説得できる自信はないけど、わかるわ。
真:いいのよ、あなたさえわかってれば。
麻:うん。また、あなたに教えられたわ。
真:やめてよ。こんなガトーショコラにがっついてカプチーノで流し込んでる女つかまえてさ。
麻:たしかにこんな女がそんな深いこと考えてるとはね(笑)。
真:このカプチーノ、泡が多いんだよ、もう!
麻:そういう飲み物じゃない(笑)……。あなたにとっては、新緑の木もカプチーノの泡も、みんな自分に断りもなしに自分を驚かせるのね。
真:いっつもこう。あーあ、楽しいね、今日は。
麻:うんうん、いい日だ。
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# by womenscrossing | 2014-05-11 01:33 | [連載]南青山五丁目午前十時