2 women to cry


a memorandum of dj2women
by womenscrossing
プロフィールを見る

南青山五丁目午前十時――真利子と麻美のふたり話し【9】

【第9回】(2014/01/20)

真:ねえ、ちょっと、これ散歩するには寒すぎじゃない?
麻:なに言ってるのよ、若い頃はあなただってこのくらいの寒さがいちばん気持ちいいって言ってたじゃない。いつからそんなおトシになっちゃったのよ。
真:そりゃ、いまだって、気分的にはそうなんだけどさ。カラダが追いついてこない。
麻:情けないわね。
真:主婦になるとこんなもんよ。
麻:あっさり負けを認めないでよ。もうちょっとがんばってよ。
真:そうね。昔はさ、雪が降った日の夜は絶対散歩したよね。もう雪が凍っちゃってる上をざくざく歩いて。
麻:そう、あんたはよくこけてた。
真:運動神経悪いくせにそういうの好きだからね。
麻:やっぱりさ、ずーっと都会に生きてる女はさ、どこかで自然に戻らなきゃいけないのよ、絶対。その機会がこれ、厳冬だと思うのね。
真:またー。クリエイターはすぐ理屈をつける。たんに冷たい空気が好きだってだけじゃない、私たち。
麻:うんうん、そうです。そのとおり。またさ、この時期がいいんだよね。
真:それあんた、毎年言ってる。クリスマスの街はイヤ、正月休みの街はイヤ、なんでもないただの寒い冬の夜がイイって。
麻:だってしょうがないじゃない、子どもの頃からずーっとそうなんですから。あなただって同じでしょ?
真:まあね。人も街も、日常がそのまんま冷凍保存されて、私たちだけがそれを独り占めしてる、そんな幻想をもてちゃうような、この時期の寒い夜は好きよ。
麻:あら、クリエイターっぽいこと言った。
真:からかわないでよ、いやあね。
麻:失礼。でもさ、今朝の雪、全然積もらなかったね。
真:それくらいでいいよ。どっさり積もったらさ、みんな「すげー」とか言って喜ぶじゃん。だからイヤ。
麻:おとなげない!
真:そうよ、悪い? 私がこういう性格だって、あんた昔から知ってるでしょ?
麻:はいはい。あなたらしいわ。そしてちょっとわかる。
真:私ね、街の景色や人の気配がさ、「何かが変わる!」みたいな感じになってると、とたんに興ざめしちゃうのよ。「あ、私はそれけっこうです」って。雪が降っても結局積もりもせず、中途半端に路肩が凍るだけで、ただ寒くて星だけが無駄に光ってて、人も少なくて、街の光も心細い。そんな、ちょっと空しい気配が、いちばん私の心を救ってくれるの。なんていうか……。
麻:「ああ、やった、街も人も私を救わない!」って実感できるから、でしょ?
真:そのとおり。さすがあなた。
麻:だって、それは私も共有しているもの。あなたほど大人げなくひねくれてないけど。
真:悪かったわね。
麻:しょうがないじゃん、この街で暮らしてるんだもん。
真:でもダンナは全然わかってくれないよ、この感覚。
麻:そりゃそうよ。あんたと私くらいだ、こんな物好きで素直じゃなくて、特異体質な女は。
真:でもたまに不安になる。これスノッブすぎるのかな?って。
麻:だいじょうぶ。本当のスノッブって、格が違うから(笑)。
真:ありがとう(笑)。そうよね。この中途半端さがさすが私。積もりそこなった雪と同じ(笑)。
麻:そう、自信もっていい。あんたは所詮路肩の氷(笑)。
真:やあーだー(笑)。
麻:あっはは。ちょっと大声出しすぎ!(笑)
真:さて。もうここまで来た。今日はコーヒー、中で飲んでく? テイクアウトで飲みながら歩く?
麻:ばかなこと訊かないでよ。決まってんじゃん、そんなの。あんたの考えと一緒よ。
真:はーい。……すみませーん、カフェラテのMサイズを2つ、持ち帰りで! 砂糖は要りません!
[PR]
by womenscrossing | 2014-01-20 00:18 | [連載]南青山五丁目午前十時