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南青山五丁目午前十時――真利子と麻美のふたり話し【5】

【第5回】(2012/10/13)

真:ねえねえ、あのさ、ただの主婦であるこの私がさ、いまインディーズのニューウェーブ・スピリットをもって行動するって、どういうことだと思う?
麻:なによ、突然。どうしたのよ。
真:ふとさ、気になったのよ。というより、いきなり湧き上がってきたのよ、焦りが。
麻:だってあなた、きのう今日主婦になったわけじゃないでしょ。なんでいまなのよ。
真:わからないわよー。さいきん80年代の音源をいろいろ聴いてるからかな。それがじわじわ効いてきちゃったのかな。
麻:そもそもインディーズもニューウェーブもとうに死語でしょ。ニューウェーブ・リバイバルだって死語よ。
真:わかってるわよ、それくらい。でもしょうがないじゃん、私たちの若い頃って、そういう時代だったんだから。
麻:でもなんでいまそんな問題意識もたなきゃなんないわけ?
真:なんだろ、このままじゃ私なんにもできずに終わっちゃう感、っていうの?
麻:あなた、そういう自意識だけはあいかわらずね。
真:ええ、そうよ、所詮つまらない自意識よ。あなたと初めて会った高校1年の頃からなんにも進歩してませんわよ。
麻:ほんとね。
真:あなたはさ、なんだかんだいってクリエイティブな仕事してるからそんなこと考えなくていいんでしょ。
麻:別にアーティスト精神なんてかけらもないけどね、いまは。ただ、良くも悪くも、そういう業界に片足突っ込んでることはたしかだから、否定はしないけど。
真:でしょう? あなた贅沢よ。
麻:専業主婦に言われたくないわよ。
真:たしかにね。でもダメ。あなたのほうがいい。
麻:好きにしたら。で、どんな表現とやらをするのよ。
真:それが何にも思い浮かばないから訊いたんじゃないの。やっぱとりあえずお店やるか? ちょっと田舎のほうにでも行って。
麻:いかにも都会のつまらない主婦らしい発想ね。
真:そうね。
麻:ジン作ったら?
真:それも考えた。でもこれっていうアイデアがない。
麻:ニューウェーブなこと考えなさいよ。インディーズっぽく。
真:無理よ! なにそれ。
麻:あんたが言ったんじゃないの。
真:もうさ、こうなったらさ、とことんバカみたいな主婦やるか。近所の主婦トモ巻き込んで。
麻:それやんなさいよ、それニューウェーブよ。インディーズよ。
真:そうか。それか。
麻:そう。で、誰かの家で、売りもしない手芸作品とか、詩を手書きで書いてコピーして綴じたやつとか、そんなもんばっか作って、プレゼントしあうの。全部ダンナに内緒で。
真:それすごい! とんがってる。かっこいい。
麻:どう? 満足?
真:まあ、やってみたら絶対うまくいかないだろうけど、それいくわ。
麻:いいのよ、ダメならやめれば。そんなもんでしょ。
真:そんなもんね。そうそう。▲
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by womenscrossing | 2012-10-13 23:49 | [連載]南青山五丁目午前十時