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by womenscrossing
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南青山五丁目午前十時――真利子と麻美のふたり話し【17】

【第17回】(2016/08/18)

麻:うわー、予想以上の汗! マンガみたい(笑)。
真:はい、ただいま日課完了。
麻:もう外苑西通りスプリントのスペシャリストね。
真:今日は東通りもセットで。
麻:ひゃー、最上級の試練ね。
真:だってこれくらい灼熱じゃないとね、挑みがいがないから。
麻:まあ、中途半端なぬるい暑さがキライなあなたと私の価値観なら、そうなるわよね。このぱきっとした条件をピンポイントで捉えて。
真:たまにはちょっと無理もしとかないと、カラダが甘えちゃうからね。
麻:ストイック(笑)。でも案の定、メイク全部落ちてるよ。
真:最初からすっぴんよ。
麻:えー、さすが。
真:だって支障ないでしょ。
麻:まあね。いまこのカフェですっぴんなのは間違いなくあなただけだと思うけど。
真:ネイティブだからいいのよ!
麻:もちろん。
真:あなたは初日しか来てくれないわね。
麻:別に、忙しいわけじゃないんだけど、なんとなく、一人のほうがいいのかなと思って。
真:やっぱりわかってた。実は、一人のほうが自分のペースで動けていい。
麻:でもたまには来てよ、でしょ?
真:そのとおり。
麻:じゃあ、37℃くらいのときに行くわよ、ふらっと(笑)。
真:あー、それ大歓迎ね。
麻:そういえば、外苑前の角に新しくできたジェラート屋、行った?
真:行った。でもあれね、灼熱のなか疾走してきて、冷房が効いた店でジェラートって、なんかちがうんだよね。
麻:そう言うと思った。やっぱり今日もホットのハーブティーだもんね。
真:いくら味がよくても、そう感じちゃった瞬間に冷めちゃう。
麻:そうね。じゃあ私は仕事のあいまに行ってみるわ。
真:それなら楽しめるかも。わたし的には可もなく不可もなくな感じ。
麻:まあ、いまあのへんにできる新しい店なんて、そんなもんでしょ。
真:そうよねー。この店には長持ちしてもらわないと。
麻:あ、そうそう、5年前くらいにあなたに紹介したあの辻堂のカフェね、こないだ閉めたんだって。
真:そうか、わたし結局1回しか行かなかったな。
麻:んー、そうね、あなたがそんなにハマる感じじゃなかったね。
真:そういう店多いのよー、私(笑)。
麻:わかってる(笑)。でもそれいい性格だよ、何度も言ってるけど。
真:でしょー(笑)。あ、そろそろシャワー浴びに帰らないと。またね。
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# by womenscrossing | 2016-08-18 23:03 | [連載]南青山五丁目午前十時

【設定】南青山五丁目午前十時――真利子と麻美のふたり話し

◆形態
40代前半(197x年生まれ)の女ふたりによるダイアローグ
◆人物
◇真利子: 主婦(子なし)
◇麻美: 独身クリエイター
*ふたりは高校以来の旧友
◆場所・時間
基本はタイトル通りだが、回によって変動する。
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# by womenscrossing | 2016-05-18 23:24 | [連載]南青山五丁目午前十時

南青山五丁目午前十時――真利子と麻美のふたり話し【16】

【第16回】(2016/05/06)

麻:あ、おはよう……って、なにそれ、かっこいいじゃない! ランニングタンクトップだ。
真:そう! 買っちゃった。
麻:走ってきたの?
真:ううん。自転車。外苑東通りを。
麻:そのタンクトップ一丁で!?
真:そうよ。だってほかに何も着てないでしょ?
麻:やるわねー。あいかわらず。
真:でもわかるでしょ?
麻:もちろんわかるけどね。あなたがそうするのは。で、一応月並みなこと訊いておくけど、寒かったでしょ? 朝の8時じゃ。
真:そりゃ寒かったよ。だから気持ちよかった。
麻:でしょうね。うん、やっぱり筋が通ってるね。
真:まあ、こんな季節になっちゃったら、こうするしか楽しみはないでしょ。
麻:ちょうどGWも明けて、人も少ないしね。
真:そう、やっと私たちにとっての地獄のような日々から解放されたんだから、これくらい思い切ったことしないと。
麻:そうよねー。まあ私は家のベランダでハーブティー飲んでたけど。
真:あなたはそれでいいのよ。私はさ、これくらいしないと……、衝動がね。
麻:抑えられないよね。わかるわかる。私だって気持ち的にはそうしたいよ。タンクトップ一丁かどうかはともかく(笑)。
真:ま、私もね、今日一回やっちゃえばもういいんだけど。基本。
麻:まあね。暑くなってからそれやってもね。
真:やれないよー、そんな野暮なこと。
麻:うんうん。でもスピード感は欲しいじゃない。
真:だから深夜しかないね。
麻:そうね。コースは?
真:外苑西通り。
麻:思ったとおり(笑)。
真:そりゃそのシチュエーションだったらね。
麻:思いっきり車道をね。
真:そう。それしかないねー。帰りも、青山通りでOK。
麻:うーん、私もいままで何回かやってるけど、想像するだけでいい気持ちなんだよね。
真:ぬるっとした風でも許せるのは、それくらいだもんね。
麻:そうね。そして最後はうちに寄って、熱いジャスミンティーで締め。
真:またシャワー貸してくれる?
麻:もちろんよ。着替え忘れないでね。
真:そうそう、去年はさ、シャワーさせてもらって、からだにタオル巻きつけたままあなたのソファーで寝ちゃったよね(笑)。
麻:で、起きたら勝手にトースト焼いてコーヒー淹れてて(笑)。
真:起きてきたあなたに「いかが?」なんて言ってたね(笑)。
麻:あれは呆れたわ。
真:でもさ、都会のフリーの女の最高の贅沢だよ。
麻:あなたは主婦だけどね、それで(笑)。
真:あのときはさすがに怒られた。でもねー、怒られてでもしたいよ、ああいうことは。
麻:まあ私はかまいませんけど(笑)。
真:ああー、なんか今日のベーグルサンドはことのほか美味しいよ。
麻:そうね。でも私はあのときあなたが私に突き出した焦げたトーストの味が思い出されてしょうがないよ、いま(笑)。
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# by womenscrossing | 2016-05-06 22:17 | [連載]南青山五丁目午前十時

南青山五丁目午前十時――真利子と麻美のふたり話し【15】

【第15回】(2016/03/08)

真:いやだ、全然寒くない。
麻:ここのところずっと、こんな感じね。
真:いやだわー。
麻:いやね。
真:寒くない春の始まりなんて、最悪ね。死にたくなるわ。
麻:何のせいかしら。
真:原因なんてなんだっていいよ。とにかく、もうだめだ。
麻:そのわりには……、シナモントーストを食べる食欲はいつもといっしょね。
真:こっちに楽しみを見出すしかないじゃない。だって。
麻:そうよね。
真:空は曇って、空気はよどんで、生[なま]あたたかくて。こんな状況じゃ、外から刺激を入れるしかないじゃない。
麻:それがシナモンか。
真:そ。まあ、甘っちょろい刺激ですけどね。
麻:しかもちょっと女子っぽい。
真:女子でいいよ、もう。何が悪い。
麻:ずいぶんなご機嫌ね(笑)。気持ちはわかるわよ。でも、おもしろいなーって思うの。ちょっと。
真:なにが?
麻:ぱきっと、クールでハードな、変化のためのツールが欲しいのに、選んでるのがシナモントーストとカプチーノなんだから。結局、苦さやぴりっとした感覚――それもちょっとしたものだけど――だけじゃなくて、同時に甘さが必要なんだなっていうのがひとつ。あと、なんかそのチョイスの結果が、逆に、いまのあなたの怒りの対象であるこの陽気と、なんかちょっと近いんじゃないのかなって。
真:シナモンが曇り空の色か。あとカプチーノのもこもこ感……。
麻:ま、そんな感じ。つまりさ、レモネードとかとは真逆じゃない。
真:やー、だって、それはさ。
麻:そう、たしかに、ここでレモネードはね、ちょっとね。
真:ないない。そこはやっぱりさ、ねらったわけじゃないけど、こっちでしょ。
麻:うん。私もそう思う。
真:そういってあんたは結局プレーンスコーンとハーブティーだけどさ。
麻:これは、私なりの、この陽気への抵抗かな。
真:まあね、わからなくはない。でもやっぱりあんたはクールだよ。スコーンには何もつけてないし。
麻:そうね、まあ。
真:ふえっ。そのいやみのないいやみな反応がまたクールで、かなわないね。
麻:私はね、こっちがクールでいることで、よどんだ生あたたかさに負けないようにしたいの。
真:そっか。そうねー。私もね、そりゃそうできればいいよ。
麻:あなたはいいのよ、それで。自分のきらいなものと通じてしまう、でも自分の好きなものを丸ごと飲み干して、それで戦うわけだから、見えない日々の敵と。
真:うん、そうじゃなきゃやってけない。
麻:いいのよ、それで。
真:そっか。あなたがラディッシュのサラダとか食べてるときに、私は春キャベツのクリームスープ作っちゃったりしてるんだ、きっと。
麻:そういうことね。でも私もあなたもそっちのほうがカンファタブルなんだし。
真:うん。そうやって、なんだかわからないけど、なんとか負けないようにやっていくしかない。
麻:そう、だって、私たちにとっては、こんな空や空気や温度は耐えられないんだからね。
真:私は待つよ、晴れて肌寒い午前10時を。意地で。この街で。
麻:そうね。がんばろう。
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# by womenscrossing | 2016-03-08 23:50 | [連載]南青山五丁目午前十時

町田ノイズ35周年

 2015年11月21日(土)昼12時半すぎ。現在、町田ノイズのカウンター席でこれを書いています。
 昨晩はこの同じカウンター席から、cro-magnonのライブを観たのでした。目の前での演奏。格別でした。心身が軽くなって、余分な力が抜けた感じ。演者も、聴衆も、もちろんスタッフも、自然な「ホーム」感を醸成し、共有していて、本当に気持ちのよい2時間+αでした。オープンでありながら親密さをたたえている。アイデンティティを強く意識させることはないが、ある一定の共通の感覚を確認できる。そういう空間でした。そしてそれは、ライブという特別なときに限らず、いつもの・ふだんのノイズに流れている時間のありかたでもあります。
 ノイズは「ジャズが流れる喫茶店」であり、「ジャズ喫茶」ではありません。ティーン女子向けのファッションビルのいちばん奥にあり、このビルの中に唯一存在する「うす暗い」空間です。ジャズ愛好者も来ますが、お客さんはショップ店員やサラリーマンや学生や主婦が多いです。したがって、共通の趣味をもつ人だけが集まるところではありません。かなり雑多な空間です。仕事や勉強をしている人もいれば、商談/打ち合わせをしている人もいれば、恋バナをしている人もいます。一人で黙ってただ煙草をふかしている人も、ひたすらビールを飲んでいる人も。でもバックにはいつもジャズが流れていて、目を上げればレコードのジャケットが目に入る。それはどんな人にも共通の条件。ジャズが好きな人も興味ゼロな人も、オシャレを求める人もアングラ趣向の人も、この空間に身を置き、時間を過ごしている、ただそれだけでどこか、つながっているのです。不思議な感覚です。
 誰にも干渉されない。でも人といっしょにいる安心感を感じる。「あ、あの人、ジャークチキンライス食べてる、おいしそうだな、あっちにしとけばよかったかな、まあいいか、Aランチおいしかったし、でも次はジャークキチン食べよう……」そんなことが頭に浮かび、そして次の瞬間には消えていきます。いつもは大嫌いな煙草のにおいも、ノイズで嗅ぐと不思議と自然に受け入れられたり。「ああ、子どもの頃は煙草のにおいを嗅ぐとオトナの世界に触れたようでうれしい気持ちになっていたなあ……」なんてことを思い返したり。ふとノスタルジーにも向かいつつ、でもセンチメンタルというよりはクールであって。とりとめもない薄い記憶と思考が、頭をよぎっては去っていきます。
 ライブを聴いている最中も、そういう状態でした。音と、煙草のにおいと、ほのかに漂ってくる料理のにおいと、うす暗い灯りと。それが、耳と、鼻と、目と、頭と、心と、体を、ぐるぐる循環して、自然と全体のバランスが調和している状態。自分の内面と外の世界の境界が曖昧になっていく感覚。それが心地よく。
 アイスコーヒーの氷が溶けて、カランと音がしたら、いまの現実に戻る合図。また町田の街の喧騒に入っていきます。こんなことが、ずっと繰り返されてきました。これからもずっと繰り返したいと、ただそう思います。こうした空間は、一人の人の意識や努力や才能だけでは作れません。街と、たくさんの人々と、そして十分な時間が作るものです。その要素を手放してはいけない、そう思います。町田が町田であり続けるために。
 なにはともあれ、町田ノイズの35周年をお祝いします。
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# by womenscrossing | 2015-11-24 23:55 | エッセイ